【完】葉月くんの素顔は甘くてズルい♡
まやかしに過ぎないそれが吹っ飛んで、無機質な音とともに、羽澤の足元に転がった。
躊躇うことなく今にも泣きそうな羽澤がそれを拾い上げると、手の中にそっと握る。
やっぱり、そんな顔、これ以上させたくないんだよね。
「な……っ、なんなんだよテメェ!ただのクラスメイトなんだろ!?しゃしゃり出てくんなよ!」
「何度も同じこと言わせる前に、自分が言ったこと思い出しなよ?」
「はぁ?俺が言ったこと?」
まるでわかってないこの男は、やっぱりなにひとつ覚えていない。
「自分がどんな言葉を吐いたかも覚えてないんだね?」
「は……?頭腐ってんじゃねーか?誰と間違ってんだテメェ」
「間違ってない。言った側は簡単に忘れても、言われた側はずっと忘れないってわかんないの?」
それだけ深く傷として残ってる。
「悪いけど、今さら後悔しても琴莉は譲ってあげないよ?」
手放せないのは、俺の方だけど。