【完】葉月くんの素顔は甘くてズルい♡
「……飛鳥くんのことなんだけど」
「陸上部のエースがどうかした?」
飛鳥くんの名前を出しても葉月くんは顔色ひとつ変わりやしない。
「たまたま、偶然会って……話したの。葉月くんとは幼なじみだって教えてくれて……」
「へぇ。さすが探偵。それで?」
動揺なんて微塵も見せず、くるくるとフォークにパスタを巻き付ける葉月くんに、私は静かに目を向ける。
「飛鳥くん……葉月くんのこと、心配してたよ……すごく」
繋ぎ合わせるように言葉にすると、葉月くんのフォークを持つ手が一瞬、止まった。
「なんで?幼なじみだからって、心配されるようなことなんてないと思うけど」
けれど、すぐにいつもの“裏”葉月くんの涼し気な表情が宿される。
「それに、葉月くんは憧れだって……」
「そんな要素ないでしょ」
「あるよ!あるある!いっぱい!」
きっと自分のいいところは、なかなか自分じゃ見つけられないのかもしれない。