【完】葉月くんの素顔は甘くてズルい♡
下校時間が近づき、作業を中断した私は馬面に急かされながら片付けにとりかかる。
「羽澤ー!マジごめん!これ、頼まれてくんねーかな?」
……と。
声をかけてきたのはこの度の劇の主役、王子役の及川(おいかわ)くんだった。
「あ、ゴミ捨て?」
「そそ。このあと俺、衣装合わせっつーの?それがあるって言われてさ。本当にごめんなんだけど」
及川くんはウチのクラスの中心にいる明るくて元気のいい男子だ。
陰キャ総選挙なんてものを一部の人が開催していても、決して便乗しなかった。
「うん!いいよ!私やっておくから衣装合わせ行ってきてね!」
「おっ!助かる!」
すると及川くんは、なにやら誰かを見つめたあと、私に肘打ちしてくる。
「ひとりで大変だったら、彼氏にも手伝ってもらって?なっ?」
「ちょっと……!葉月くんとは、そういうんじゃないよ!もう!」
ニヤニヤしながら言われて、私は慌てて否定した。