【完】葉月くんの素顔は甘くてズルい♡
ずっと一緒にいた幼なじみの存在に、気づかないわけがないと思った。
葉月くんのそばを、ハッとした表情を見せた飛鳥くんが走り過ぎていく。
……だけど。
「……湊音!」
すぐに息を切らした飛鳥くんが立ち止まりこっちを向いた。
その時、私には見えた。
飛鳥くんの声に足を止めた葉月くんの瞳が、ほんの一瞬、切なげに揺れるのを。
「俺、再来週、大会に出るんだ……」
肩で呼吸を繰り返しながら、葉月くんの後ろ姿を一心に見つめている。
「だから……見に来てくれないか?」
葉月くんは、振り向かないまま。
私の脳裏に、準備室まで荷物を運ぶのを手伝ってもらった時の飛鳥くんとの会話が浮かんできた。
───" でも、今は跳べるようになった。だから…… "
きっと、葉月くんにこうやって伝えたかったんじゃないかなと思う。