【完】葉月くんの素顔は甘くてズルい♡
「ごめん……こんなこと言う資格……なかった」
絞り出した飛鳥くんの声が、宙に消える。
葉月くんはなにひとつ言わず、答えを待ち続ける飛鳥くんを見ることもなかった。
まるで存在していないみたいに、葉月くんはそこに立ち尽くしている。
ふたりが背を向ける。
再び強く走り出した飛鳥くんの足音が、遠くなっていった。
「葉月くん、いいの……?」
飛鳥くんが去っても動こうとしない葉月くんに、私は心配になってようやく声をかけた。
……ねぇ、葉月くん。
このままでいいわけがないって、葉月くん自身も、本当はわかってるんじゃないのかな……。
「アイツが言ってること逆なんだよね」
「逆……?」
「俺が見に行く資格がないってやつ」
ポツリ……と落とされた声は、聞き取るのが精一杯な程で。
葉月くんが顔を上げる。
でも、まるで傷ついたような表情をしていた。