【完】葉月くんの素顔は甘くてズルい♡


「……飛鳥くん、悔しそうにしてたよ」


「なんで?」



いつも通りの葉月くんの口調で聞き返してきたけれど、私には悲しそうに響いた。


だから声に詰まった。

口にしてしまえば、葉月くんを傷つけるかもしれないと思ったから。



……だけど。

今の葉月くんは、本当の葉月くんを隠してしまっているみたいで。



「飛鳥くんが言ってたよ。本当の葉月くんを壊したのは……俺だからって……」



躊躇いながら口にすると、葉月くんが弾けたように私に視線を投げた。


メガネの奥の瞳は、やっぱり悲しく揺れる。


これは、私の身勝手な思いかもしれないけど。


それでも、本当の葉月くんを隠してしまった何かが、今も葉月くんの心を締め付けているのだとしたら。


それを消すことは私には出来ないかもしれない。


けれど、ほんの少しでいい。

本当に少しだけでも、なくしてあげたいよ。




「───お前には関係ない」


だけど、返ってきた声は、温度を失くしたように冷たかった。

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