【完】葉月くんの素顔は甘くてズルい♡
私は、本当の葉月くんをまだ知らない。
なにひとつ、わかってなんかいなかった。
「時間切れ」
時間、切れ……?
終わりを知らせるような言葉に、胸が震えた。
私は、呼吸さえ忘れて葉月くんを見る。
「探偵のくせに、時間かかりすぎってこと」
「葉月、くん……?」
「探偵ごっこはもう終わりだよ、羽澤」
「っ、」
射抜くように私を見据えた葉月くんの冷たい瞳に、何も言えるわけがなかった。
それは、これ以上、踏み込んでくるなという強い拒絶だった。
葉月くんは、一度も振り返ることなく私のそばから立ち去った。
……つい先程まで、葉月くんは隣にいたのに。
秘密を探す内に、いつしか私は葉月くんを知りたくて追いかけていた。
「どうして……」
だけど、近づくことは、どうしてこんなに難しいんだろう。