【完】葉月くんの素顔は甘くてズルい♡


新しい物を一から作り直すわけにはいかないから、と。


及川くんがそう言ったのは、小道具係の女子が一所懸命作った物だと知っているからだ。



「ねぇ及川くん!最後にその王冠つけたのって、練習中の時だと思うんだけど、いつか覚えてる!?」


「それなら、羽澤にゴミ捨てを変わってもらった日だよ。衣装合わせが終わったあと、なんだかんだ他の空き教室からもゴミが出ちまって、結局俺が捨てに行ったんだ」


「及川、あんたまさか、衣装着たまま!?」


「……ああ。着替えてから行けばよかったんだけど。マジで迂闊だった」


「も、もう……王冠くらい外していきなさいよね!」


「木ノ下の言う通りだ……ごめん!」


「べ……別にもう謝らなくていいわよ!わたしも探すから」



及川くんの肩をポンポンっと叩いて咲希ちゃんが励ましていた。



「ゴミ倉庫は見た!?」


「すぐに見に行った。でも、落ちてなくて」



探すのはかなり困難だけど、今は全力で探すしかない。

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