【完】葉月くんの素顔は甘くてズルい♡
あのゴミ倉庫は天井が低い。
私でさえ頭がぶつかるかもしれないって思うくらいだ。
だから、もしかしたら及川くんは、ゴミ倉庫の前で王冠を外したのかもしれないと思った。
及川くんは倉庫の中は見たと言っていたけど、その周りを探せばあるかもしれない。
それを作った子は、石を磨いて加工して、装飾と塗装を施した。
そんなに丁寧に作ったものなら、なおさら見つけるしかない!
こんな天気だから風に飛ばされてしまう前に……。
「え……?」
……だけど。
そのことに、私よりも先に気づいた人がいた。
倉庫の前には、私と同じように傘もささずに立っている人がいて。
「……嘘。なんで?」
口から零れ落ちた声は、雨音に負けて聞こえているかわからない。
「なんでお前まで濡れてんの?」
私に気づいた葉月くんは、同じようにずぶ濡れで……。