【完】葉月くんの素顔は甘くてズルい♡


あのゴミ倉庫は天井が低い。

私でさえ頭がぶつかるかもしれないって思うくらいだ。


だから、もしかしたら及川くんは、ゴミ倉庫の前で王冠を外したのかもしれないと思った。


及川くんは倉庫の中は見たと言っていたけど、その周りを探せばあるかもしれない。


それを作った子は、石を磨いて加工して、装飾と塗装を施した。


そんなに丁寧に作ったものなら、なおさら見つけるしかない!


こんな天気だから風に飛ばされてしまう前に……。




「え……?」



……だけど。

そのことに、私よりも先に気づいた人がいた。



倉庫の前には、私と同じように傘もささずに立っている人がいて。



「……嘘。なんで?」



口から零れ落ちた声は、雨音に負けて聞こえているかわからない。



「なんでお前まで濡れてんの?」



私に気づいた葉月くんは、同じようにずぶ濡れで……。

< 208 / 321 >

この作品をシェア

pagetop