【完】葉月くんの素顔は甘くてズルい♡
誰ひとり葉月くんには近づこうとはしない中、及川くんは違ったね。
「すごいね、葉月くんは。すぐ気づいちゃうんだもん……」
「別に。倉庫に来てみたらすぐ見つかったよ?」
すぐ……と、葉月くんはなんてことないように答えたけれど。
それは嘘だってわかっちゃうよ、葉月くん。
「ううん。葉月くんが必死に探してくれたから見つかったんだよ?」
目を逸らした葉月くんの制服のズボンは汚れていて、ブレザーの胸ポケットにはメガネが差し込まれている。
「葉月くんは、本当に優しいね」
だって、大事なそのメガネを外したのは、雨に濡れたら視界が悪くて探せないから。
ズボンだってそうだ、土で汚れてるのは膝をついて探してくれたからでしょう?
「優しくなんかない」
「ううん……葉月くんの容姿は、神様に与えてもらったものかもしれないけど。でも、葉月くんの優しい心は、葉月くんがつくったものだよ」
やっぱり隠しちゃうのはもったいないよ。
もっと、本当の葉月くんを教えて欲しい。
葉月くんは何も言わず、ただただ驚いたように私を見つめていた。