【完】葉月くんの素顔は甘くてズルい♡
*葉月くんにだって逆らうよ
劇の練習が本格的にスタートした。
慌ただしい一日が過ぎるのはとても早くて、もう放課後だ。
葉月くんが見つけ出してくれた宝石は、あの日のうちにしっかり及川くんに届けた。
その時、及川くんは、涙目になりながら「ありがとう……」と何度も繰り返した。
私じゃないよ……と、返すのが精一杯で。
不思議そうな顔をしていた及川くんに、見つけてくれたのは葉月くんだよって言ってしまいたかった。
けど、葉月くんはそれを望んでいない。
望んでもいないのに私の口から伝えることは、私の自己満足でしかなくて、一体何になるんだろう。
葉月くんに伝わらないなら、なんの意味もないのに。
「……あ、まただ。飛鳥くん」
「どうしたの、咲希ちゃん?」
帰りの支度をしていると、咲希ちゃんが溜め息をついた。