【完】葉月くんの素顔は甘くてズルい♡
「言われてみれば、葉月くん……クラスの日誌もびっしり書いてて、すごいよく覚えてるなって思いました……」
酸素を取り込みながら東條先輩の話に耳を傾ける。
「そういう記憶力も、何でも覚えていく湊音が可愛くて……小さいうちから、湊音のお母さんが知育に積極的だったからなのよ」
「知育って、なんでしたっけ……」
「能力や知力を伸ばすことよ、バカね」
「覚えておきます……」
ようやく乱れた呼吸が落ち着いた東條先輩は、空を見上げてから、再び口を開いた。
「一度吸収したものは何度か繰り返したら自分のものにしちゃうのよ。勉強も運動も音楽も、なんだって思うがままに。それを天才だーって、飛鳥がよく騒いでたわ」
東條先輩は懐かしむように遠くを見ていた。
「最初は周りにも自分にも良くても、成長する度に、それは全て悪いことにしか繋がらなかった」
「悪いこと……?」
「何でも出来すぎたのよ、湊音は」
「でも、それっていいことじゃ……」
「本来はね?でも、出来ることだって、出来ない方がいい時があるのよ」