【完】葉月くんの素顔は甘くてズルい♡
理解出来ない私を見た東條先輩が、はぁっと溜め息をついた。
「仮に、あなたが小さい時からピアノを習っていたとする。中学生になって、コンクールに向けて練習している最中、その技術を数週間もしないで初心者のクラスメイトのひとりが簡単に習得する。そしてコンクールで入賞したのはあなたではなく、そのクラスメイトだった。どう?」
「く、悔しいです……素直におめでとうって言えないかもしれない……」
「そういうことよ。湊音は、そのクラスメイトの方」
「……」
「おまけに、あの容姿でしょ?イジメられていたわけじゃない。でも、出来の良すぎる湊音に浴びせられた言葉は、少しずつ湊音の心を壊していった」
葉月くんの心を……?
「大人からも信用していた先生にさえも、あんなこと言われたら、湊音の心が耐えられなくなったって無理もないのよ……」
「……」
「本当はわたしから話すことじゃないと思ったけど、あなたがあまりにも諦めないし、湊音から離れる気配がないからこうして教えてあげたの」