【完】葉月くんの素顔は甘くてズルい♡
何も言えなかった。
何も言えるわけがなかったのだ。
「湊音は、ひとりになりたいの。そうすれば傷つくことがないでしょう?」
「で……でも、ひとりが好きなわけじゃない」
「え?」
「飛鳥くんが言ってました……。葉月くんは、ひとりが好きなわけじゃないって」
自らひとりを選んで、ひとりでいることが平気な人間なんて、本当にいるのだろうかと私は思う。
「葉月くんも飛鳥くんも、苦しそうです」
ふたりが背を向けたあの日、見ているこっちまで胸が締め付けられた。
「それに、東條先輩も苦しそうです……」
「わたしが?」
「だって、あんなに私に怒るのは、葉月くんが大切だからですよね?」
「……っ、」
大切だから怒るんだ。
これ以上、苦しい思いをさせたくないし、大切な誰かに傷ついてほしくないから。
咲希ちゃんだって、葉月くんのことを警戒していたのは、私が傷つくことを心配してくれていたから。