【完】葉月くんの素顔は甘くてズルい♡
東條先輩との中庭での決闘を包み隠さず伝えると、葉月くんが目を見張って息を飲むのがわかった。
「へぇ。聞いたんだ?双葉から」
葉月くんは背中を向けて再び外の世界に視線を走らせたけど、私はしっかり葉月くんの背中に頷いた。
私は、目を逸らしたりなんてしないよ葉月くん。
「聞いたよ。葉月くんがどういう子で、どれだけすごかったか……」
葉月くんはなにも言わず、私を見ない。
「どれだけ、傷ついたか……」
「傷ついた?なにいってんの?」
「っ、」
窓の世界から再び私へと向けられた温度を失くした瞳は、もう何も映していないように見える。
目の前にいる私でさえ。
「それ、俺が傷つけたの間違えだよ?本当、ハズレてばっかのヘボ探偵なんだから、いい加減廃業にしなよ」
まるで突き放すような言い方だった。