【完】葉月くんの素顔は甘くてズルい♡
ほぼ叫びに近い声だったかもしれない。
「苦しくて……逃げてもいいよ葉月くん。ずっとこのまま、隠してたっていい……」
葉月くんがそれを本当に望んでいるなら。
「でも……隠せば隠すほど、葉月くんは苦しいでしょう?」
葉月くんの痛みは私にはわからないよ。
だって葉月くんの痛みは葉月くんのものだから。
だけど、私は嬉しかったんだ。
あの日、葉月くんが後藤くんに言ってくれたこと。
刃のように冷たい言葉を浴びせた本人はころっと忘れていて、でも言われた側はずっと忘れない。
そうやって葉月くんは人の痛みに寄り添える人なんだよ。
私の心を、汲んでくれたんだよ。
だからこれは私のわがままかもしれないけれど、本当の葉月くんの心まで消えちゃうのは、どうしても嫌なんだ。
だから葉月くんにだって、私は逆らうよ。