【完】葉月くんの素顔は甘くてズルい♡
「うわぁ!葉月くんまた100点だ!」
「すげぇ!今度俺にも算数教えてよ!」
小学校低学年のうちはただ純粋にクラスの奴らも褒めてくれて、俺を頼ってくれたことが嬉しかった。
「っしゃー!運動会は俺らのクラスが優勝だぞ!だって湊音がいるんだから!」
「頼んだぞ、湊音!」
「うん。俺、絶対負けないよ」
笑顔で俺の背中を叩いたクラスメイト。
それだけで、なんだってもっと出来そうな気がした。
だけど、成長する度に周りの奴らの心はどんどん俺から離れていく気配を感じた。
「葉月の奴……なんでも出来すぎだよな?アイツと同じクラスになるまでは、俺がずっとリレーで一番だったのに」
「……私も、音楽会の伴奏とられちゃった。いっぱい練習してきたのに。ちょっとくらい手加減してくれてもいーのにね?」
「無駄だろ。葉月は手加減してあげるとか譲るなんてこと知らないんだから」
「私だって硬筆で金賞とりたかったのにさ。誰かが一所懸命頑張ってきたものを、すぐ横取りするよね」
「それも、余裕ですって顔してね?」
自分が異質でしかなかった。
高学年になる頃には、俺の足元は歪んでいった。