【完】葉月くんの素顔は甘くてズルい♡
「手加減されて勝ったって、ちっとも嬉しくなんかないからな!だから湊音は、俺に遠慮したら許さないからな!」
真っ直ぐな声は、いつも俺の心の奥まで沁み込んでいった。
「何も気にする必要なんてないわ。湊音みたいに出来るようになるためには、いっぱい努力すればいいのよ」
ひとつ上の双葉はこの頃からやけに大人びていて、気づいたら飛鳥と同じように俺の隣にいた。
「それにわたし、湊音がなにか学んでる姿とか、結構好きよ?」
「湊音ばっかりズルいぞ!双葉、俺はー!?」
「飛鳥は子供っぽいもの」
「じゃあ早く大人になる!」
「バカね。そういうところよ」
無愛想で冷たいという奴もいたけど、双葉はこれでも俺を心配してくれてるし、飛鳥のことは誰よりもよく見ている奴だった。
そして、それは突然やってきた。
「葉月くん。お願いよ。伴奏を引き受けてほしいの」
「でも」
小学校生活最後の音楽会。
何度か断ったけれど、音楽を担当していた当時の教師は諦めてくれなかった。