【完】葉月くんの素顔は甘くてズルい♡
穏やかに流れているように見えた時間が止まるのはすぐだった。
「葉月。悪いんだけどさ、お前に頼みがあって……」
「どうした?」
顔を曇らせて声をかけてきたのは、中三になって同じクラスになった小野寺(おのでら)だ。
「こんなこと頼みたくねーんだけど、今度の中間テスト、手ぇ抜いてくれないか……?」
「は?」
「ほら……っ、葉月はさ、いつも一番だろ?今回だけ、俺に譲ってほしいんだ……」
特に親しかったわけじゃないけど、小野寺はこんなことを頼んでくるような奴じゃない。
人当たりもよくて友達も多い。
学力は高く、テストの順位は決まって二位。
クラスの中心に立つ小野寺は、先生からの信頼だって厚かった。
「何かあった?お前はそんなこと頼むような奴じゃないだろ?」
「……」
「先生に何か言われた?」
「た……頼むよ。譲ってくれ!本当に、今回だけでいい……マジで頼むから……」