【完】葉月くんの素顔は甘くてズルい♡


そのあとも、理由は一切口にしなかった。


ただひたすら頼むと繰り返し主張する小野寺は、尋常ではないくらい引き攣った顔をしていた。



「なによそれ?まさか湊音、本当に手加減して譲るつもり?」


「絶対ダメだよそんなの!ズルだろ!それに、高校に入ったり、大人になったりしたら小野寺はどうするの?」



飛鳥は無邪気で子供っぽいと双葉に指摘されることもあったが、自分の気持ちを正直にぶつけてくる奴だ。



「毎回違う誰かに頭を下げ続けるの?そんなのは、わたしは小野寺くんのためにならないと思うけど」



ふたりの言ってることは正しい。

内心では同じことを思っていたし、頼んできた理由はわからないけど、小野寺のためにはならないと思った。


そして、テストの結果が出た時、小野寺の名前は俺の下に表示されていた。



「小野寺くんすごいよ!また二位だもん!これならいつかは、一位もとれるかもしれないよ?」



クラスの女子が声をかけていたが、小野寺の顔には絶望の色が見えた。

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