【完】葉月くんの素顔は甘くてズルい♡
「……ごめんな。お前のためにならないと思った」
帰り際に小野寺にそう伝えたが、何ひとつ答えることはなく、顔面蒼白のまま教室を立ち去っていった。
それからしばらく小野寺の欠席は続いた。
小野寺のあの時の顔が頭から離れず、家に行ってみようかと考えていた時。
「アイツん家さ……親父が超エリートで、一流企業のお偉いさんらしい」
「ああ……それなら俺も聞いた。厳しくて、いつも二位だから、そろそろヤバいってもらしてたからな」
「みんなで小野寺くんの家に行ってみる?お父さんに、たまに手をあげられることもあるって聞いたから心配なの……」
手をあげられる……?
俺は耳を疑った。
小野寺があれだけ懇願してきた理由、青ざめた表情、それら全てが恐怖心からきていたものだと俺はその時ようやく気づいた。