【完】葉月くんの素顔は甘くてズルい♡


「あなたのせいで、あの子とわたしは毎晩あの人に罵られているのよ!叩かれて、罵倒されて……っ」



突如、俺に掴みかかる小野寺の母親の言葉に、息が止まりそうだった。


俺のせいで、小野寺が傷ついてる。

家族が、壊れてしまう。



「あの子がどんな思いであなたに頭を下げたと思ってるの……?それをよくも断れたわね!たったの、一度でよかったのに……っ」



小野寺の母親と、あの時の絶望に染まった小野寺の顔がピタリと重なった。



「あなたは頭ばかりよくて、人としての心はとっくに壊れているんでしょうね。可哀想に」


「……っ、」



ドンッ!と身体を押されて、小野寺の母親は家の中に姿を消した。



───もう、限界だったと思う。



間違いなく、自分の存在が誰かを傷つけてるってことが。


成長するごとに用意された痛みは、本当に少しずつだったけれど、俺の心に重くのしかかって。


自分の心さえも、どうつくればいいのかわからなかった。

< 242 / 321 >

この作品をシェア

pagetop