【完】葉月くんの素顔は甘くてズルい♡
真剣に陸上をやってる奴にも悪いから、一回跳べたら仮入部は終わりにする、と約束した。
あまりにもしつこい飛鳥の提案にのったのは、なんでだったんだろう。
飛鳥が俺のことを心配してるって伝わったからだったと思うけど。
跳んで、落ちて、失敗して。
それからひたすら跳んで、上手い奴の跳び方を見てまた跳んで。
飛鳥とふたりで棒高跳びに明け暮れていた時間は、今までで一番優しい時間だった。
「ぷっ!湊音のくせに、だっせー!」
俺が失敗する度に飛鳥が顔をくしゃくしゃにして笑う。
「うるせぇ……」
「恥ずかしいんだろー!」
それを見てるのが好きだった。
中学最後の大会で選手に選ばれたいと張り切って練習する飛鳥の傍らで、俺はその日、初めて跳んだ。