【完】葉月くんの素顔は甘くてズルい♡
身体は地上から高い位置にあって、空も飛べそうだった。
飛鳥の言う通り、ちっぽけなことがどうだってよくなるくらい綺麗な空がそこにあって。
いつもより雲が近いとか。
澄んだ空の青さとか。
太陽の位置がずっと高いとか。
初めて見たその景色に、心が軽くなった。
「湊音……!?」
驚いて、はしゃぎながらもデカい声で俺を呼ぶ飛鳥。
「すげーー!やっぱり湊音はすげぇや!」
子供みたいに喜んでる飛鳥を見たら自然と顔が緩んだ。
俺が跳びたいって思ったのは、一度でいいから、飛鳥が見てる景色を見たかったから。
たったそれだけだった。
それだけでよかったのに。
現実はいつだって優しくなんてなかった。
「どうだ、葉月?大会に出てみる気はないか?あれだけの高さを跳べるんだ。仮入部だけで終わらすのは、どう考えてももったいないじゃないか」
顧問の誘いを俺はすぐに断った。
それでも、先生は諦めてはくれなくて。
数日でいいから考えてくれないかと、部のみんなからも頼まれた。