【完】葉月くんの素顔は甘くてズルい♡


「俺は、出て欲しくない……」


「飛鳥?」



歯を食いしばって、肩を震わせる飛鳥が心配になって呼びかけた。


だけど、この時もう何もかもが遅かったと思う。



「昔からなんでも出来て、なんだって持ってるくせに……」


「……っ、」


「───俺の一番大事なものまで、奪おうとしないでくれよ!」



多分、俺は生まれて初めて、飛鳥が泣いている姿を見たと思う。



今度は、何かが壊れる音が、確かに聞こえた。




「───いつも、そうやって傷つけてきたのは俺の方だった」



全部を話し終えると、羽澤の小さな手が俺の手を両手で握り締めていた。



「だから、誰も関わりたいなんて思わない奴になればそれでいいって」



透明人間でも、陰キャ総選挙第一位でもなんだってよかった。



でも、本当は自分が自分じゃない気がして。


どこにいても、上手く息が吸えなかった。



───“ 人の心なんて壊れてるんでしょうね ”


それでもひとりなら、もうこれ以上誰も傷つけない。


ずっとそう思ってた。

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