【完】葉月くんの素顔は甘くてズルい♡
私と葉月くんは人だかりの一番後ろにいる。
咲希ちゃんらしき人の姿を発見したけど、今はそれどころではない!
本当にこのままじゃ気づいてもらえない。
「そろそろだな。飛鳥が跳ぶの」
こうしている間にも、すぐにでも飛鳥くんの跳ぶ時間がやってきてしまう。
何かいい方法はないのか、と知恵を振り絞る。
もう……こうなったら強硬手段だ!
「葉月くんごめんなさいっ……!!」
「は?」
人でごった返す応援エリア内で、私は一言謝ってから葉月くんの大きなメガネを奪った。
「……お前なにして、」
突然のことに眉根を寄せて顔をしかめる葉月くん。
「だって……飛鳥くんに気づいてほしいから!」
「だから、この人混みじゃ……って、聞いてる?」
ボサボサの髪だって、私が勝手にくしゃくしゃ触って直した。
こんな風に触るのは初めてで、柔らかくてふわふわしてる……。
「葉月くんが来てるって、飛鳥くんに気づいてほしくて……」
あれ……?
なんか余計ボサボサになってない?
「ったく……」
しょうがないなって顔をした葉月くんが、手馴れた様子で髪を直していく。