【完】葉月くんの素顔は甘くてズルい♡
そんな葉月くんはクスクス笑って、応援エリアの最前列へと向かいながら私の手を引いていった。
「俺の大事な奴が跳ぶんだけど、少しここいいかな?」と、“裏”葉月くんに丁寧に言われた女の子は、顔を赤らめながらもスペースを分けてくれたおかげもあって。
競技が見えるベストポジションにつけたと思う。
「あぁ……飛鳥くんまた失敗しちゃった……」
「この高さって飛鳥くんの自己記録より少し高いよね?最近の練習でも跳べなかったのに、大丈夫なのかな……」
不安そうに見守る女子の声が聞こえてくる。
設定されたバーの高さを、飛鳥くんは練習でもまだ成功したことがないんだ。
グラウンドの中心には次に跳ぶ順番を待つ飛鳥くんの姿がある。
その顔は憂鬱そうで、生き生きとしていなかった。
次が、ラストチャンスだ……。
飛鳥くんの順番になり、ポールを握りしめる。
……と、その時。
「───飛鳥!」
隣で見守っていた葉月くんが、その名前を呼んだ。
周りにいた誰もが飛びつくように葉月くんを見る。