【完】葉月くんの素顔は甘くてズルい♡
グラウンドと資料室。
遠くたって、飛鳥くんは葉月くんを見つけたんだよ。
だから、きっと葉月くんの声は届くだろう。
「……っ、」
葉月くんの声に気づいた飛鳥くんがゆっくりとこちらを向いて、しばし驚いている。
だけど、飛鳥くんの顔が、今にも泣き出しそうになる。
でもそれは、きっと悲しいからじゃない。
すぐに無邪気な笑顔を浮かべた飛鳥くんが、うんと大きく頷いた。
「飛鳥なら絶対跳べる」
独り言のように呟いた葉月くんの手を、私は握り返した。
飛鳥くんは空を仰いで、大きく深呼吸をする。
走り出した飛鳥くんは力強く地面を蹴って、
誰もが手に汗を握って見守る中、空へと飛んだ。
お願い……!!
祈る気持ちで見上げれば、青空の中には飛鳥くんがいて。
それはとても自由に空へと飛び立ったみたいで。
「綺麗だな」
……と。
いつかの思い出を辿るように、葉月くんがポツリと呟いた。