【完】葉月くんの素顔は甘くてズルい♡
* * *
まだ、グラウンドに湧き起こった歓声は鳴り止まない。
自己記録を更新した飛鳥くんの姿に、私まで胸が熱くなった。
こんな風に誰かの勇姿を見届けたのは、これが初めてかもしれない。
「ほ……ホントにもう帰るの!?」
人混みを抜けて、正門へと歩く葉月くんの背中に問いかけた。
「これからはまたいつでも会えるでしょ?」
背を向けたまま葉月くんが言った。
どこか弾んで聞こえる葉月くんの声は嬉しそうで。
背中合わせだったふたりが、また幼なじみとして笑える日がくるのだと思ったら、嬉しくて笑みが零れる。
葉月くんの後ろをついていくように歩き出した、その時。
「……待って、湊音!」
ドタドタと近づく足音と同時、葉月くんを呼ぶ声が飛んできた。