【完】葉月くんの素顔は甘くてズルい♡
バランスの取れた大きな瞳があまりにも近くて、ドキッと鼓動が揺れ動いた。
人が泣いてる時にまでからかってくるなんて、どこまでからかい上手で意地悪なんだろう。
心の中でいくら悪態ついても、心臓は正直に反応するから自分でも困ってしまう。
「ここに来たのだってお前のおかげなんだから、もう泣くなって」
それにはすぐにぶんぶんと首を振った。
私が……というのは違くて、これは葉月くんが自ら答えを見つけたから。
「だって……嬉しいもん。こういう嬉しい記憶が……葉月くんにも残るから。だから嬉しいんだよ……」
過去は変えられないけれど、いつかそういう優しい記憶がいっぱいになって、葉月くんがもっともっと笑顔になれたらって思うんだ。
「その記憶もお前に押されてるんだけど」
「え……?」
どういう意味かわからなくて、ズルズル鼻をすすりながら葉月くんを見上げる。