【完】葉月くんの素顔は甘くてズルい♡
「え?」
みんなが瞬時に振り返ると、開け放たれた教室の扉の前には、葉月くんが立っていた。
「葉月?」
「今、喋った………?」
「あ、あの葉月が、喋ったぞ……」
信じられないものでも見たかのように、驚きで声すら出ない人もいる。
「葉月、くんが……?台詞、覚えてるの?」
監督を勤める女子が教室内に入ってきた葉月くんに恐る恐る尋ねる。
「この台本面白かったから、何回も読んでるうちに覚えただけ。リハもやってないし、今及川から軽く教えてもらったくらいで。だからぶっつけ本番でもよければ」
すらすら喋る葉月くんにみんなが釘付けだった。
あの馬面でさえ「俺のクラスの生徒だよな……?」と、確認までしている。
「で、でも……」
「王子が姫と出会うのはシーン6、記憶を取り戻すのはシーン22で合ってる?」
「えっ、そうだけど……」
「一番長い台詞は記憶を取り戻して姫を見つけ出した時だよね?」
台本もなしに次々に説明していく葉月くんに、監督はうん!と強く相槌を打った。