【完】葉月くんの素顔は甘くてズルい♡


「すごい……葉月の奴、全部覚えてんだけど」


「あの、葉月……が?」


「けど、王子の役だし……葉月くんじゃ、その……雰囲気が……」



ボサボサヘア、猫背、分厚い大きなメガネにみんなの視線がこれでもかってくらい注がれる。


すると葉月くんは、少し考える素振りを見せると、私の元へとやってきた。



「これ、直してくんない?」


「へ……あの、髪……?」


「そう。こないだもやってくれたでしょ?」



それって……。

大会の時、私が髪を直そうとしてわしゃわしゃと触ったことを言ってる……!?



「あの時は、咄嗟にっていうか……っ」


「自分じゃ見えないんだよね」


「葉月くんっ、絶対慣れてくるせに……」


「ダメ?」


「っ、もう……」



わしゃわしゃと手で直して髪を整える間も、みんなの注目を浴びて背中が焼けるように熱かった。


「アイツら復縁したのか?」なんて声まで聞こえるし……。



「もう秘密じゃなくなっちゃうね?」



なんて言いながら、葉月くんは、素顔を隠し続けてきた分厚い大きなメガネを外した。

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