【完】葉月くんの素顔は甘くてズルい♡
「俺は構わないけど、この学校の噂知ってんの?」
「へ?噂……?」
「出るらしいよ?二年の女の先輩が“それ”に名前呼ばれたとか聞いたけど?」
「そ、それ……?」
「そう。特進科の彼氏待ちしてるときに、本来なら存在しないはずの“それ”に遭遇したんだとか」
「そ、そ、それって……っ、まさか……」
やっとスマホから顔を上げた琴莉の頬は引き攣っていた。
「でも、琴莉はホラー得意って言ってたから大丈夫なんだろうけど?」
「……あ、いや。私その……ホラー得意宣言は控えたっていうか。今は自重してて……」
強がってんだろうけどしっかり顔に出てるよ。
「ふーん。まぁ、気をつけて帰んな?」
───グイッ
ブレザーの裾を引っ張られて、振り返る。
「どうした?」
なんて言いながらとぼけてみせたけど。
やば……口もと緩んでんのバレそう。
「………あの、もし葉月くんがよろしければだけど、一緒に、帰りたい……です」