【完】葉月くんの素顔は甘くてズルい♡
ハッキリした顔立ちの猫目の美人な人が、葉月くんの隣にいる。
クールビューティ。
耳の横からシュシュでひとつに結んだ黒髪。
落ち着いた雰囲気で、流れるおくれ毛を耳にかけながら、葉月くんと何か話している。
「ちょっとちょっと。なんであの葉月が、東條先輩と!?」
咲希ちゃんの言うその人は、東條双葉(とうじょう ふたば)先輩といって、校内でも何度か見かけたことがある。
とびきりの美人が陸上部のマネージャーらしい……と、聞いたけれど、その本人だ。
ひとつ上の学年で二年生。
ふたりが何を話しているのかまでは聞こえない。
「待ってるからね。湊音」
けど、東條先輩がとても自然に葉月くんを名前で呼ぶから、ふたりが親しいんだってことは伝わってくる。
うーむ。
いつもひとりでいる葉月くんが、こんな風に誰かと一緒にいること自体めずらしい……。
「どういうことなの!?琴莉、早速浮気されてもいーの!?」
「う、浮気って……私と葉月くんはなんでもないんだよ……?」
なんでもない、と自分で言っておいて、胸がチクッと痛みを負う。