【完】葉月くんの素顔は甘くてズルい♡
本多くんの顔が遠ざかる。
身体に回る腕、背中を受け止める感触、頭上から降ってきたどこか焦った声。
「なっ、なんでお前……っ!」
本多くんがその人物を見て、零れ落ちそう程、目を見開いている。
「……え、葉月、くん?」
顔だけをひねってみると、強引に後ろから私の身体を抱きしめるのは、息を切らした葉月くんだった。
「……だから言ったろ。行くなって」
眉根を寄せた葉月くんの息が弾んでいて、耳の横を一雫の汗が伝う。
「……やば。走るの体育祭ぶりだから、ちょっと待って」
耳元で葉月くんの乱れた息遣いが聞こえた。
走るのって……。
怒ってここまで来たのは私なのに、走ってきてくれたんだって思ったら、胸がキュッと疼いた。
「な、なんでテメェが来たんだよ!葉月……っ!」
本多くんは、今にも飛びかかりそうな勢いだ。