【完】葉月くんの素顔は甘くてズルい♡
不服そうな葉月くんと一緒に、デッキブラシを持ってプールサイドの床をゴシゴシこする。
「きゃああああーー!飛鳥くんが跳んだー!」
……ん?
校庭では陸上部が秋の市内大会に向けて練習していて、あのイケメン飛鳥くんを見ようと、女子が集まっている。
「あっ。咲希ちゃんがいる!もー!また飛鳥くん見てるんだ!本当、イケメン好きなんだから」
飛鳥くんは、はしゃぐ女子を気にもせず再び空へと飛んでいく。
「羽澤、知ってんの?」
「……え?あ、飛鳥くんのこと?話したことはないけど、圧倒的イケメンって有名だから」
「ふーん」
葉月くんが他人に興味を抱くのは珍しい気がする。
そこへ、記録ノートらしき物を抱えた東條先輩が、飛鳥くんに駆け寄るのが見えた。
葉月くんの視線は、ふたりに向けられたままで。
葉月くんの前髪が風に吹かれて、その横顔が、心なしかやけに切なく映った。