【完】葉月くんの素顔は甘くてズルい♡


「……わわっ!?ちょっ!」



つるんっ、と私の足がぬかるんだ床の上で豪快に滑った。



「は?」



弾けたように振り返った葉月くんの目が驚きに染まる。



「へ?ちょ……っ、待っ……やばっ!」



抗おうにもつるつると滑って止まらない。


バランスを保とうと、プールの縁で独特なステップを踏みながら耐えようと試みたが、とても支えきれず。



「……やばっ、落ちる!」



もう葉月くんもおわかりだろうか……。


それが私の最後の言葉となり、バランスを失くした身体が後ろ向きのままプールの中へと落下する。



「羽澤……っ」



落ちる寸前、視界の中には澄み切った空の青さと。


そしてなぜが、私を追いかけるように飛び込む、太陽を背負った葉月くんの姿が見えた。



───バシャンッ!!



水底へ沈む身体。

ゴポゴポと水が鼻に入って、塩素の匂いがする。

< 87 / 321 >

この作品をシェア

pagetop