【完】葉月くんの素顔は甘くてズルい♡
「……わわっ!?ちょっ!」
つるんっ、と私の足がぬかるんだ床の上で豪快に滑った。
「は?」
弾けたように振り返った葉月くんの目が驚きに染まる。
「へ?ちょ……っ、待っ……やばっ!」
抗おうにもつるつると滑って止まらない。
バランスを保とうと、プールの縁で独特なステップを踏みながら耐えようと試みたが、とても支えきれず。
「……やばっ、落ちる!」
もう葉月くんもおわかりだろうか……。
それが私の最後の言葉となり、バランスを失くした身体が後ろ向きのままプールの中へと落下する。
「羽澤……っ」
落ちる寸前、視界の中には澄み切った空の青さと。
そしてなぜが、私を追いかけるように飛び込む、太陽を背負った葉月くんの姿が見えた。
───バシャンッ!!
水底へ沈む身体。
ゴポゴポと水が鼻に入って、塩素の匂いがする。