【完】葉月くんの素顔は甘くてズルい♡
「……っ、ぶはぁっ!!」
水中から勢いよく顔を出して、必死に酸素を取り込む。
……まさか落ちるなんて。
水を吸い込んで重くなった制服のまま、手をバタつかせてなんとか地に足をつける。
「……バカ」
「っ、葉月くん!?」
なぜだかそこには、同じくびしょ濡れ姿の葉月くんが立っている。
な、なんで……?
「葉月くん……なんで飛び込んだの!?」
私が落ちる寸前、葉月くんの姿が見えたけれど、見間違えじゃなかったらしい。
「お前が落ちるからだろ。条件反射ってやつじゃない?」
はぁっ、と溜め息を零して、ぷかぷか浮いているメガネを拾い上げる。
すっかり濡れてしまった葉月くんの黒髪から、輪郭をなぞるようにポタポタと水滴が落ちてきた。
「痛いとこない?」
「へ?」
「どこも痛くないかって聞いてんの」
「あっ……うん。痛くない……大丈夫」