偽りのキス
放課後、玄関で乙を待った
なぜか律もいた
「誰、待ってんの?」
律が聞いてきた
「え…乙…」
「オレも」
やっぱり一緒に帰るのか…?
乙が来たのが見えた
「乙ちゃん」
律が先に手を振った
「今日、コイツが一緒に帰るみたいだから
オレ、辞退する
また今度一緒に帰ろうね
…
乙ちゃん、寂しかったら…
いつでも言ってね
…
友達だから…」
律はオレの前で乙に言った
「うん、ありがとう…」
「うん
じゃあねー、乙ちゃん
…
蒼汰、…しね…」
律はオレにイヤミを言って
先に玄関を出た
律って自分でも言ってたけど
チャラチャラしてるようで
オレよりぜんぜんしっかりしてて
いつも自分より相手のことを考えてる
オレは、自分のことばっかり…