偽りのキス

「ずっと、雨だね…」

ガラスから外を見て、私は言った




「うん…」

蒼汰はずっと外を見てた




私は、お弁当を少し残して片付けた


なんだか喉を通らなかった




ストレートティーをもう一口飲んで
蒼汰に返した




「ありがとう
ごめんね、今度おごるね」




蒼汰と目が合った瞬間
蒼汰の口が私の口を塞いだ



ーーー


「蒼汰…?」


ーーー


キス…?


蒼汰は私の目を見ないで
何度もキスした


ーーー


雨の音で
私の鼓動が蒼汰に聞こえてないといいな…


ーーー



ガラガラガラドーン…


大きい雷の音がして…


蒼汰の口から


私の名前じゃない名前が聞こえた気がした




雷の音と重なって
私の鼓動と一緒にかき消された




「…ごめん…
オレ、5限体育だから行くわ…」



「うん…」



蒼汰は走って階段を下りて行った




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