偽りのキス

オレはずっと窓ガラスを見てた



雨があたる窓ガラスは
昨日の透明な傘を思い出させた



綾ちゃん…




「ずっと、雨だね…」

乙の声が聞こえてオレは乙を見た




「うん…」




乙はもう一口アイスティーを飲んで
オレに返した




「ありがとう
ごめんね、今度おごるね」


そう言った乙の唇が
アイスティーで濡れてて
キスしたくなった




目が合った…




ーーー



「蒼汰…?」

乙の驚いた声が雨の騒々しい音の中聞こえた



ーーー


オレ…キスしてる?



ーーー


オレは、昨日の綾ちゃんのキスを思い出していた


ーーー




乙の目は見れなかった




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