偽りのキス

いつも一緒に電車乗ってるのに
なんか緊張した




乙は吊革につかまって外を見てた


襟足に少し残る髪が女の子らしくて
少し見惚れた



「ん?」


オレの視線に気付いたのか
乙が首を傾げてこっちを見た



上目遣いで、ドキッとした



「蒼汰、背、伸びたね」



「あぁ、うん、そぉかな…?」




いつの間にか
乙の背をだいぶ追い越してた



中学の時は
同じぐらいの目線だった



今は乙の背が
オレの肩ぐらいにあった





乙を抱いた時
女の子ってこんなに柔らかいんだ
こんなに華奢なんだ
って思った



初めて抱いた女の子




綾ちゃんじゃなくて

乙だった…





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