記憶を失ったキミに、100本の薔薇を。
七奈は、信じられないという顔で俺の方を見ていた。
しばらく固まってしまっていた七奈に「おーい」と言いながら七奈の目の前で手を振る。
「……あ、いや、ごめん、マジで今びっくりしてる……。ぼうっとしてるんじゃなくて、ほんとに」
七奈は、俯き加減で目を泳がせながらそう言った。
「そ、そんなに驚かなくても……、俺ら、ちっちゃい時から一緒にいる仲じゃん?」
何か悪いことをしたような気もするけど、俺の本心はそうだから。
だから、七奈の返事を静かに待つ。
「ご、ごめん……、気持ちの整理がつかないんだわ、また日を改めて返事をするね」
そう言って七奈は、空き教室から去っていった。