からふる。~第26話~
俺は昔から人の顔色を伺い、自分より他人の心配をするやつだった。


自分本位だったら寮長を任せられることもなかったと思う。


わりと自由人だし、リーダーシップも生憎ない。


落ち着きと公平性、中立性を持ち合わせているから選ばれたようなものだ。


そんな俺の初恋は黒糖まんじゅうに関連する。


初恋の相手は幼なじみの真宮緋彩(ひいろ)という女の子だった。


色白で大人しい俺とは正反対の、明朗快活で自分の確固たる意志を持つ賢い女の子だった。


彼女とは家が近所で、よくブランコと滑り台しかない公園で遊んでいた。


遊んだ帰りによる場所があった。


和菓子や"花より団子"。


最初は団子の歯ごたえが嫌いで、特にみたらしがダメだった。


あのあまじょっぱい感じがどうにもこうにも好きになれなかったのだ。


だけど、彼女はそんなみたらしが好きで毎回2本平らげ、俺に完食した証を見せつけていた。


俺は仕方がないから食べられる饅頭系の中からお店1番人気の黒糖まんじゅうをちびちびと食べていた。


店の前の色褪せたベンチで夕日が沈むのを見ながら饅頭を食べるなんて小学生ながらすごいじじくさいことをしていたと思う。


いや、じじくさいは失礼か。


風情があることをしていた、に訂正しよう。


そんな何気ない毎日を俺は今も忘れられない。


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