たとえばあなたのその目やその手とか~不釣り合すぎる恋の行方~
「素敵なお母さまですね」

私はそう言うと、グラスを傾けワインを口に含んだ。

「近いうちに礼兄ちゃんと一緒に母に会いに行ってきたら?こんなかわいい人がお嫁さんになってくれたらってきっと喜ぶに違いないわ」

澪さんは身を乗り出して、いたずらっぽい目で私に微笑む。

「それはお前が先だろう。結婚決めたんだったら」

「あはは、まぁそうだけど」

あー、ドキドキした。あんな冷やかされ方して彼がどんな反応するのか。

もちろん付き合って間もないわけで結婚なんてもっと先の話だし、彼が最終的に私を選ぶかどうかなんてわからないわけだから。

それに、彼は仕事が第一だからきっと結婚なんて考えてないかもしれない。

今の話題には全く気にも留めない様子でワイングラスを傾ける彼の横顔を見つめながら、小さく息を吐いた。

「ところで、澪」

彼が澪さんを正面から見据えた。

「何?」

「お前、いつまでここにいるつもりだ?」

「いつまでって?え?今日はここに泊まっちゃだめ?」

澪さんはきょとんとした顔で彼の顔を見つめる。

「あ……そっか」

そして私に視線を向けると、目を丸めたまま言った。

「やっぱり私はお邪魔虫?」

「もちろんだ」

礼さんは腕を組み、冷たく言い放つ。

いやいや、それはないでしょう?この時間に久しぶりにやってきた妹さんを追い出すなんて。

「澪さん、私にはお構いなく!私はこれから帰りますから」

私は椅子を引いて立ち上がった。
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