たとえばあなたのその目やその手とか~不釣り合すぎる恋の行方~
すると、彼が私の腕をぎゅっと掴む。

「ここにいろ」

彼の切れ長の目が一瞬切なく光ったように見えた。

掴まれた腕が熱い。

ドクドクと腕から体中に熱い血が流れていくようだった。

「邪魔はしないわ。部屋もたくさんあるし、お二人さんから一番離れた部屋に泊まらせてもらうから今晩だけは許して」

澪さんは私たちを冷やかすような笑みを浮かべながら、顔の前に両手を合わせた。

そんなこと言われたら恥ずかしいんですけど!

きっと私の顔はお酒も入って余計に真っ赤になってるだろう。

彼は長いため息をつき、小さく「しょうがないな」と呟くと、私の方に再び視線を上げる。

「構わないか?」

「ええ、もちろんです」

「ありがとう!さすが都ちゃん。本当に礼兄ちゃんにはもったいないくらいいい人だわ!」

彼女は立ち上がると、私の前にやってきてぎゅっと抱きしめた。

「じゃ、私はこれで!あとはお二人でごゆっくり」

澪さんは私に手を振ると、自分のグラスをキッチンに置き、リビングの隅に置いてあったアタッシュケースを持って一番奥の部屋に入っていった。

「やっと行ったか」

彼は前髪をかき上げると、私に椅子に腰かけるよう促す。

そして、ほぼ空になった私のグラスにワインを注いだ。

「急なことで気を使わせてすまない」

「いえ、澪さんにお会いできて私は嬉しかったです。それに、礼さんのことも色々知れたし」

彼はまだ言い終わらないうちにそっと私の肩を抱き寄せる。

私の体を預けた彼の胸はとても熱いような気がした。

そのまま優しく私の頭を撫でる。

「俺自身どうにかなってしまったようだ。澪のことが邪魔に思うなんて初めてだ。今すぐにでもお前が欲しくてたまらないという抑えのきかない感情も」

頭を撫でる手が止まり、その手が私の頬に当てられ彼の正面にくいっと向けられた。




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