たとえばあなたのその目やその手とか~不釣り合すぎる恋の行方~
まさかバーの場所を知ってる人と出会うなんて。

ホッとしたと同時にお腹がグーっと鳴った。

時計を見ると午後一時半を回ったところ。お腹も空くはずだ。

とりあえず、食事をとってから会社に戻ろう。

駅前の小さな洋食屋に入り、グラタンランチを頼んだ。

ベシャメルソースは、大好きだけれど自分で作るには手間がかかるからほとんど作ったことがない。

とろんとしたソースがマカロニと一緒に口の中でとろけた。

満ち足りた気持ちの時のグラタンは一層おいしく感じる。

さて。

ここからがいよいよ本番だ。

今夜、例えバーに行ったとしたって社長が来るとは限らない。

社長に会えるまでは、根気強く通うことになるだろう。

タイムリミットはたった二週間。それまでに社長と出会い、記事の依頼をし、引き受けてもらわなければならない。

自分の運の強さにかかってる。

ここまでは順調なんだからきっと大丈夫!

うん、間違いない。根拠なんてこの際いらないわ。信じて突き進むのみ!

丸いグラタン皿の隅に残っていた最後のソースをスプーンでしっかりすくい取り、口の中に入れる。

なぜだかその最後の一すくいに苦みを感じた。
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