たとえばあなたのその目やその手とか~不釣り合すぎる恋の行方~
お昼を食べた後、一度帰社し社内に残っていた坂東さんにバーの話を報告した。

「まじ?でも、なんだか怪しいなぁ。大丈夫なの?その山川って人」

坂東さんはチョコレートをつまみながら心配そうな顔で私に言った。

「だって、ほらちゃんと名刺ももらったし。やばそうだったらすぐ逃げるつもりです。逃げ足だけは早いですから」

「そう?私も一緒に行きたいけど、今日はちょっと残業無理なんだよね。ごめん!」

坂東さんは両手を顔の前で合わせた。

「私のことなら心配ご無用です。一人でも全然大丈夫ですから。ところで坂東さん以外のメンバーは皆出張ですか?」

「編集長は川西副編集長と幹部職会議で終わり次第印刷会社へ出張。由美ちゃんはカフェの取材に午後から出たわ」

「そうですか」

編集長には今日の収穫のことを真っ先に報告したかったけれど、とりあえず明日落ち着いて伝えた方がよさそうだ。

いい報告ができるといいなと思いつつ、午後七時になり約束の場所で山川さんを待った。

改札の前は会社帰りの人の波でごった返している。

時計を見ると、既に七時を十分超過していた。本当に来てくれるだろうか。

ただ、冷やかし半分に口約束をしただけかもしれない。

意味深な笑みを浮かべていた彼の口元を思い出し、少し後悔する。

いや、まだわからない。もうしばらく信じて待ってみよう。
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