たとえばあなたのその目やその手とか~不釣り合すぎる恋の行方~
しばらくしてカウンターの上に出来上がった三つのグラスを岡山さんが取りに向かう。

その間に、山川さんが私に顔を近づけ小さな声で言った。

「あいつ、ちょっと軽いノリでごめんね。悪い奴じゃないんだけどさ。あれでも以前は社長とよく仕事で絡んでたから俺よりも社長のことは詳しいはずだからなんでも聞いて」

そうだったんだ。

どうせ今日限りの付き合いになるわけだし、しっかり情報だけはいただくわよ。

「はい、おまたせー」

その直後、岡山さんがグラスを持って私の前に置く。

細長い筒状のグラスの上にはうっすらと白い細かい気泡が品よく泡立っていて、グラスの淵にはレモンが添えられていた。

ノンアルコールビールなのに、ちょっとしたことでこんなにもしゃれたドリンクになる。

「んじゃ、とりあえずこの出会いに乾杯」

岡山さんのノリはやっぱり好きになれないと確信しながらも三人でグラスを合わせ、ビールをのど元に流し込んだ。

グラスを置き、アルコールがなくてもこの雰囲気と音楽だけで十分気持ちよくなれるようなバーの空間を見渡す。

もちろん一緒に来る相手は選びたいけれど。

ドクン。

一息ついた時、心臓が大きく跳ね視界が揺らいだように感じた。

気のせいだろうか。それとも今日の疲れがたまっているから?

お腹の中央から全身にじわじわと熱くなっていく感覚。

まるでアルコール度数の強いお酒を飲んだ時みたいに体中が微かにしびれて始めていた。


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