たとえばあなたのその目やその手とか~不釣り合すぎる恋の行方~
「すみません!もう少しだけ!」

私は慌てて速足で立ち去ろうとする彼の前に立ちふさがる。

「一体、お前は何なんだ?俺は悪いがその手のものには出ないと決めている」

「承知しています」

「それならば話は早い。君の期待には答えられないので他を当たってくれ」

「錦小路社長でないとダメなんです!」

「あ?」

「私たちの雑誌には錦小路社長が必要なんです」

「言ってる意味がわからない。どうして俺じゃなきゃダメなんだ?」

「それは……」

それは、あなたが出てくれれば私たちのボスやチームを守れるから……なんて言えない。

「どうせ、売り上げアップでも図りたいだけだろう?」

黙ったままの私を見透かしたような冷ややかな口調でそう言った。

「何も言い返せないか?俺はあらゆるマスコミや出版物には一切出ないと決めている。話は終わりだ、そこをどいてくれ」

「では、どうして出ないと決めてるんですか?」

必死だった。額に張り付いている冷たい汗を手で拭う。

「俺には今の仕事と社員達を守る責任がある。それが脅かされる可能性のあるものは全て不要だ。顔なんか出して偉そうなことでも言ってみろ。揚げ足取られるのがおちだ」

そしてニヤッと笑い続けた。

「それこそ君と違って危機管理意識が強くてね」

私はぐっと両手を握りしめ、彼の目を睨みつけた。

「危険を冒してでも私には守らなくてはならないものがあるんです!」

そう言い放った私の気迫に押されてか、一瞬彼の表情が真顔になる。

「私は今回、何としてもあなたに取材を受けて頂くために覚悟を決めてここに立っています。あなたの危機意識は十分理解しました。だから私は絶対あなたを裏切ったりしません。どんな危険を冒してでも」

「ほう?」

彼の口元が僅かに緩む。

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